
私がAEDP心理療法の最初のトレーニングである「イマージョン・コース」に参加したのは、今から4年前の2021年6月のことでした。そのコースは、ニューヨークのAEDP研究所が中心となり、イスラエルとスウェーデンのAEDPコミュニティとの共同開催で企画されたものでした。
コロナ禍でオンライン開催ではありましたが、日本時間の夜中に5日間連続で英語で実施されるというハードな条件でした。それでもそのイマージョン・コースで臨床家としてとても大切な体験と学びを得ることができました。そこでの体験と学びを、特にこれからAEDPを学ぼうとしている専門家の方々にシェアさせていただきたいと思います。
以下の文章は4年前の参加当時にとあるメーリングリストで共有した文章です。参加した当時の驚きや感動をお伝えするために、できるだけ当時の文章のまま時制なども変更せずに掲載させていただきます。現在形で文章が書かれていますがご了承ください。
---ここからイマージョン2021の参加体験記です---
AEDPイマージョン・コース Day1&2 体験記
AEDP Immersion International, June, 2021 (Online)
Co-sponsored by AEDP Israel & AEDP Sweden.
The Dyadic Repair of Attachment Trauma:
Healing at the Edge of Transformational Experience
Presented by AEDP Founder and Director, Diana Fosha, PhD & Guests
Sunday thru Thursday, June 6 - 10, 2021
Presented in English
1日目の体験
現在私は、AEDPのイマージョン・コース(オンライン)に参加しています。全5日の日程のうち2日を終えたところです。この2日間は、AEDPの創始者であるダイアナがレクチャーとセッション・ビデオの解説をしてくれました。
1日目と2日目を通して、とても印象に残る体験をしたのでシェアさせていただきます。ちょっと長くなりますが、お時間のある時にでも読んでいただけたら嬉しいです。
イスラエルやスウェーデン、アメリカ、ブラジルなど、世界中から80名ほどの心理や精神医学、福祉などの専門家が集まりました。日本にルーツのある人が私を含めて4人参加していました。初日のミニワークでは、配慮があったのだと思いますが日本語話者の方(偶然にも同じ県に住んでる人でした!)とペアになりました。ミニワークはペアでブレイクアウトルームに分かれ、テーマは関係性のメタプロセシング(振り返り)でした。流れは以下です。
ミニワークの流れ
- Zoomのブレイクアウトルーム開始
- 簡単に自己紹介
- Th役とCl役を決める
- ワーク① 2分間
Cl役:無言で、「自分にとっての大切なもの」を思い浮かべる。
Th役:Clの作業を思いながら、見守る。(トラッキングしたり波長合わせしながら) - ワーク② 2分間
Th役:「私とこうして、大切なものを思い浮かべるって、どんな感じですか?」と関係性のメタプロセシングを促す。
Cl役:関係性のメタプロセシングをする。「一人な感じがした」とか言ってもOK。 - 小休憩1分(ストレッチとか)
- Th役とCl役を入れ替わりワーク①②をする
- ブレイクアウトルーム終了
ミニワーク①
最初は、画面上でTh役に見つめられながら「大切なものをこころの中に思い浮かべること」自体が難しかったです。正直なところ、評価されるような、隠したいような、居心地の悪さを感じました。初対面の人の前で大切なものを思い浮かべることは、私には難しいことでした。
開始して30秒ぐらいで、なんと地震がおきました。震度2ぐらいの小さいものでしたが、お互いに緊張が走るのが分かりました。でも、それほど大きくなかったので、アイコンタクトをするのみで、そのまま「無言で」やり過ごしました。揺れが収まると、つい私から笑みがこぼれてしまいました。地震の中でもワークを続ける自分たちって真面目だなとか思っておかしくてです。揺れの緊張からの解放もあったと思います。
つい私が笑ってしまったら、Th役の方も笑いました。その時、繋がりを感じました。何となくホッとして、繋がりの微笑の交換が数回ありました。そこから、なんとなく、Th役の方を見ながらも、こころの中に大切なものを抱き続けることができるようになりました。ここまではワーク①で感じた事です。
ミニワーク②
②でメタプロセシングして感じたのは、Th役に「尊重されている感じ」です。「他者の前で大切なものをこころの中に抱いても、境界を犯されない安全な感じ」です。それってどんな感じ?と、さらにメタプロセスを進めると、「定まらなかった2人の間の距離が落ち着いた感じ」とか、「大切なものを心に抱くことを許されてる感じ」、「境界を犯さない感じとか、その配慮への感謝の気持ち」でした。ここで時間が来てしまいましたが、さらにメタプロしていたら、「波が収まった感じ」とか「静かな感じ」といった、コアスステイトに繋がる感じがしました。たった4分間のワークなのに、ここまで進められることも驚きです。
もしこのワークを他の国外参加者の方としていたら・・、と考えるとちょっと怖いです。おそらく、地震による不安と動揺を共有できず、孤独や罪悪感を感じたと思います。地震に対する緊張と動揺というひとつの体験でも、2人で体験すると、繋がりを感じたりユーモアすら生まれたりしたことが印象的でした。
2日目の体験
翌日(昨夜ですが)、同じ方とペアになり、またミニワークをしました。
今度のテーマは「Affirmation」でした。訳すと「肯定」?でしょうかね。Validationとは異なるものだそうです。Cl役が「大切なもの」をTh役に開示し(3分)、Th役がその開示に感謝を伝え(大切なことを伝えてくれてありがとう、とか)、「感動した」とか「心を動かされた」とかCl役の大切なもののエッセンスがTh自身の心に与えた影響を伝えます。そして、その後、関係性のメタプロセシングを促します(2分)。Th側は、「ナゼそれが大切なのか?」とか聞かないようにという注意がありました。
Cl役の私は、初日のミニワークで浮かび上がった「自分の大切なもの抱えながら他者の前にいられることの大切さ、自分にとってのその尊さ」を話しました。Th役の方はその開示をとても歓迎してくださったので、また繋がりの感覚が生まれました。そしてまた、「それってどんな感じ?」というメタプロセシングの介入がありました。
私の中でシフトがあり、「私にとって、繋がりは自分を他者に”縛りつけるもの”という感じがあったけど、今はそうじゃなくて、”2人の間に流れるもの”という感じ」と表現しました。Th役も繋がりを同じように感じたといい、肩の力が抜ける感じがすると表現しました。私もピッタリくる感じがしたのですが、それに加えて「推進力」のような「自由に動ける感じ」が自分の中から湧き上がってくるのを感じたのでそれを伝えワークが終了しました。
DAY1と2を終えて
こんな小さな、2日間合わせてトータル10分間ほどのワークで、自分の関係性における課題が現れ、それが変化するとは思ってもみないことでした。
今回のイマージョンには、イスラエルとスウェーデンを中心に、世界中から80名ほどの方が参加しています。ダイアナという巨匠への畏敬の念もあって、私は大きな海を前にして打ち寄せる波を怖がる子供のような気分でいました。でも、このミニワークのお陰で、波打ち際へ近づいて水に足をつけ、足首ぐらいの深さなら歩けるようになりました。アタッチメント理論を思い浮かべて、自分が探索行動に出始めたのを理解し嬉しくなりました。
あと3日間ですが、自分の振返りのために言語化したものを、みなさんとシェアできたらと思います。毎日は書けないかもしれませんが、印象的な体験があったらぜひシェアさせていただきたいと思います。
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つづく